人や建物と同じく文字も都市を形成する要素の一つです。普段、空気のように感じられる文字を中心に都市を眺めてみると都市と文字のよい関係が見えてきました。そんな都市と文字の関係を十の言葉にまとめました。
街の中で人がすれ違えば、おのずと文字もすれ違います。お気に入りのTシャツに書かれている文字や、車に書かれている車種を表すロゴタイプ。手にぶら下げているショッピングバックにも文字が書かれているかもしれません。人が行き交い、文字が行き交う。そんな風に言えるのも身近で身軽な文字ならではの表現かもしれません。
心地良い風が吹くとなんだか心が和やかになります。深呼吸して歩き出せば次第に心が弾み、お気に入りのメロディーが頭の中で流れてくる事だってあるでしょう。心弾む気持ちは文字だって同じこと。心地よい風が吹けば文字は踊り、いきいきとした表情が街全体に広がります。
初めて訪れた街でまず最初に探すもの。それは、行き先を案内してくれる案内表示板ではないでしょうか。広告看板のように誇張をせず、困ったときにだけ、そっと行き先を知らせてくれる。街の案内表示板はまさに街の名脇役と言えるでしょう。
吹き込むような風と絶え間なく往来してくる貨物船。きらきら光る水面とゴーンゴーンと鳴り響くコンテナを運ぶ音。どれも港の風景の一部ですが感じ方はそれぞれ違います。文字だって、柔らかい曲線を持った明朝体と、ゴツゴツしたゴシック体とでは感じ方がそれぞれ違います。港の風景に合わせた文字の装い。いろいろと考えることが出来そうです。
ある都市で百年以上にわたり使われ続けている書体があります。エドワード・ジョンストンという十九世紀から二十世紀に活躍した書家が作ったその書体は、ジョンストン・サンと名付けられイギリスのロンドンで地下鉄を中心に使われています。ロンドンで暮らす人々やロンドンに通う人々、ロンドンへ旅行に訪れる人々など、様々な人々に愛され使われてきたこの書体は、これまでも、これからも、その人々の思い出とともにあり続けることでしょう。
多くの人が街にあつまれば街はにぎわい、活気に満ちあふれます。人が多くなれば、街頭の看板も建物の上下に連なるように設置され、街のにぎわいと比例するかのように文字が発する声のボリュームも上がるものです。そんな光景を見ていると、街と文字は親しい関係にあるのだなと感じられます。
街で見かける文字には、情報を知らせるだけでなく、人と人をつなぐ役割もあるのではないでしょうか。街に設置されている地図や案内板をたどった先には、必ずと言っていい程、人が待っていることでしょう。街と人との関係の中で、文字は切っても切りはなせない、そんな役割があると言えるでしょう。
朝日が昇る頃目覚め、夕日が沈む頃、眠りにつく。人は本来そのようて活動してきました。街の文字も人と同じように、朝日が昇る頃に目覚め、夕日が沈む頃には、その日の活動を終えます。ただ、現代社会においては人と同様、二十四時間、活動する文字も数多くあるのも事実。活動時間を照らし合わせてみると人と文字も近い関係にあるのかもしれません。
初めて訪れた町におかれているモニュメント。よく見たら文字だったなんてことはありませんか?普段、書いたり、読んだりする文字が、立体となって設置されていると、なんだかわくわくしてきます。手で触ってみたり、間をくぐってみたりすのは立体ならではのこと。ついつい記念にシャッターを押してしまいますよね。
洋の東西を問わず、人は歴史とともに文字を壁や石などに刻んできました。時代の流れとともに徐々に変化してきた文字はその時代性をあらわすものや、地域性を表す役割を担うようになりました。今刻む文字も時代の流れとともに、刻まれた時代や地域性を表すものとなるではないでしょうか。