Photo by vengomatto
ミレニアムを記念して
作られた書体
西暦2000年という千年に一度訪れる聖なる年を迎えたローマは参拝にくるキリスト教徒をスムーズに受け入れるために新しいサインシステムの計画を行った。バチカンにある大聖年準備委員会が中心となってプロジェクトを立ち上げ、書体のデザイナーにはコンペの末、オランダ人デザイナーのジェラルド・ウンガー氏が選ばれる。
ローマのために作られた書体は「Capitolium(キャピトリウム)」 となずけられ、16世紀にカトリック・キリスト教会の書記官をつとめた、ジョバンニ・フランチェスコ・クレッシが書いた文字を参考にして作られた。クレッシの文字を参考としたのには、古代ローマ時代から残る碑文であり、もっとも代表的なトラヤヌスの碑文について歴史的に初めて紹介した人物で、クレッシの文字にトラヤヌスの碑文との共通点が多くあること、さらにクレッシが大文字だけでなく、小文字も書き起こしているということがあげられる。多くの碑文には小文字が彫られていないため、碑文を参考に書体をデザインする際には小文字の問題は常につきまとう問題である。ジェラルド・ウンガー氏はクレッシに基づくことでその問題を解決した。
ウンガー氏はサイン用書体ということもあり、クレッシの書体をサンセリフ体への応用をこころみるも、形態や雰囲気がローマの景観や風土にあわないということで自ら却下(のちにVestaという書体で販売される)し、改めてセリフ体で作られた。
サイン用書体として計画されていたものの、他の媒体での応用も考えられ、最終的には本文用のCapitolium Light、Regular、italic、Boldとサイン用のCapitolium Roadが作られた。サイン用の Capitolium Roadは本文用のCapitolium Boldをベースにやや字幅を狭く、エックス・ハイトを高めに作られている。